主に日本の江戸から近代の美術品が多かったと思います。もちろん日本人作家の洋画から中世以前の美術品まで多岐にわたります。
そういえば大学院時代に、その掛け軸の状態を調査する業務の補助に携わる機会がありました。国宝などを扱う修復工房に所属する先生方の元で軸の状態を書類に記録していくというものでした。それは余談ですが、確か偶然展示で阿弥陀三尊図を観たことがきっかけとなり修了研究に選択しました。もちろん截金に取組む事を目的に作品選びをした結果ですが。美術館の学芸員の先生にはとてもお世話になりました。特に熟覧(実際に作品を観ること)では長時間に渡り行なう事ができたためより作品の雰囲気を掴む手助けとなりました。さらに、保存修復の先生に立ち会っていただいたこともあり見識も深める事ができました。何から何までご支援いただきとても幸せな時間であったと言えます。この場をお借りして改めて御礼申仕上げます。ありがとうございました。
おっと、思いで話が長くなりました。かなり簡単ではありますが現状模写について自身の修了研究でご説明していきます。
原本は鎌倉時代に制作されたもので、往生者を西方浄土から迎えに来る様を描いています。縦が100cm程度になり、標準的な大きさかと思います。愛知県に寄贈された際に半田九清堂で修理されており折れもなく表装が綺麗になっています。修復される前はかなりボロボロであったようです。
来歴は不明ですが、巡り巡って木村氏が購入?したものと考えられます。時代を経ても尚放つ、時代を超えて来たからこそ放つ雰囲気には表現し難い感覚があります。経年変化した金色の肉身からは線香でいぶされて来たんだななどと感慨に浸りながら眺めてしまいます。截金もほとんど剥落がなく当時の技量の高さと如何に大切に使われて来たかが伝わって来ます。ただ、頭光のの剥落が激しいことが目に付きます。虚空や頭髪と合わせて剥落し易い素材であったことを伺わせます。(粒子が粗い、膠による接着が弱かったなどが考えられる)
こうして過去から現在、そして未来へと語り継がれて行くんことの素晴らしいさ。いいですね。
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| 完成図 |
【上げ写し】
薄美濃紙に墨線で図像を写し上げます。紙を上げ下げして残像を利用していきます。紙が上げ下げによる負荷や汗と湿気により徐々によれてくるのが難点です。
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| お顔から始めました。 |
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| 作業風景。 |
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| 作業風景。 |
【砧打ち】
木槌で絹を打ちます。優しく木槌の重みだけで均一に打って行きます。何時間打ちましたかな。6時間くらいでしょうか。![]() |
| 説明を追加 |
【絹の染色】
購入時の絹は無地のままなので、経年変化した雰囲気を出す為に染めます。背景など薄塗りの場所では大きな差が出ます。矢車(やしゃ)を煮て抽出します。
本来はヤシャブシ(夜叉五倍子)というのかな。カバノキ科。落葉小高木。福島県以南(太平洋側)から九州にかけて分布。
実は大学内にたくさん自生?しているため研究室の仲間達で採取しに行きます。青空の下気分転換にもなりました。
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| 染め上げた絹を枠に張り込みます。 |
【彩色に持ちいる絵具】
絵具は混色して使用します。しかし、混色し過ぎは絵具が濁るため出来るだけしないで徐々に変化させていくことになります。![]() |
| 消粉(けしふん/金の粉です) |
【色見本の作成】
あらかじめ作成した色見本を熟覧時に持参して原本(実物のこと)と照合して色を調整します。その後実際にその色味を作るには何色を使ったらよいのか実験をしてから本番に入ります。![]() |
【彩色】
上げ写しを絹の下において、線を写して行きます。その後、裏から彩色します。仏画の多くが両面から彩色が施されています。こうする事で表現に幅が出ますし、表に厚く彩色する手間も省けます。また、厚く彩色してしまうと軸に仕立てて巻いた時に割れや折れの原因になるようです。よく同技法同素材といわれますが、類似作品等も含めた当時(原本が制作された時代)の文献や科学的 資料が必ず必要になります。想像と独創的な発想で研究できれば良かったのですが何ぶん凡才でしたので本当に頭の痛い話でありました。結論を言えば、ある程度しか分からない場合が多いと言えます。
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| 截金を の途中 |
【截金】
本研究のハイライトとなる截金。東京芸大の師匠から仏画を一幅仕上げたら免許皆伝だとおっしゃっていたので、気合いを入れて取組みました。とは言え、下手の横好き。時間もかかりましたし、線もガタガタで褒められたものではありませんでした。結局講評に間に合わないは、出来もイマイチだしで悔しいの一言でした。
袖の麻葉文様
の幅は約3ミリ。金箔の太さは0.2〜0.3ミリ。裾などには唐草文がはいっていおおりましたが、0.2ミリ以下です。悶絶しそうな細かさでした。黒い線は、銀が焼けてしまったためです。
目がよくて(これが一番大事かも)、長時間の同姿勢による作業にも崩れない正確な手さばき。さざめきにも微動だにしない精神力。ちょっとし事で発狂するようでは模写なんて・・・
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| 阿弥陀如来 |
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| 阿弥陀如来 |
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| 勢至菩薩 |
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| 勢至菩薩 |
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| 光背 |
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実際に制作していて、これがまた失敗の連続でした。原本のように鋭い線描が出来ないし、色味もどのように調整していけばいいのか試行錯誤。肉身と着衣で色が違がったので、これは金??背景はなんでこんなに黒いの?と疑問ばかり。
もちろん截金の正確無比な細かさに悶絶。そもそも技術がそれなりにないと模写の完成度を上げるのは難しいく。重ねて描いて行けば何とかなるという代物ではありませんでした。修練に修練を積んだ者のみが到達出来る境地ですね。
誰でも大学で学べる機会があるわけではないため、趣味で嗜める場所があればと思います。愛知県芸のお膝元であるため日本画教室こそたくさんありますが、模写も出来る場所は少ないようですね。いや、仏画教室はあるのかな!?截金と合わせて何か起こしたい気もします。
【表装】
表具師の方の指導のもと仕立てていきます。一番苦手な工程でしたので、仕上がった時の感動は大きなものになりました。
本紙の裏から補強用の和紙を打ちます。ヤシャブシで染色した薄美濃紙を使います。次に二回目の裏打ちを行ないます。これを増し裏うち(ましうらうち)と呼びます。最終的には裂と本紙をつなぎ合わせた後に三回目(または4回目)の総裏裏打で仕上げます。この時は宇陀紙を使いました。
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| 使用する道具は実に単純 |
大学、美術館、修復家、表具師、各 先生方の多大なるご理解とご支援を賜りましたおかげでなんとか終える事が模写研究でした。今一度感謝の意を述べたいと思います。
【主な参考文献】
修了研究模写及び装こう「愛知県美術館蔵:阿弥陀三尊図」現状模写報告書 加藤正晴
日本画用語辞典/東京美術
【裏話】
仏画の資料は、公立の図書館よりも大学の図書館が充実している場合があります。特に仏画は大学の教授(美大ではない)が研究していることが多く機関誌に小論文を掲載している場合があります。こういった資料が母校にはほとんどなかった為、知り合いに頼んで金沢美術工芸大学の図書館で資料を取らせてもらった経験があります。ネット上で検索してなんとか取り寄せたり閲覧する機会を作る必要があるのです。いかに縦と横の繫がりを広げて行くかも「研究」には必要不可欠と言えます。行動力がものを言います。
模写と截金どちらに興味が有ったのかと問われると截金に興味がありました。良くも悪くも彩色は個人差が出ます。技法も多岐に渡り頭を悩まします。その点截金は、形と幅を思い通りに切る事さえで切れば後は丁寧に貼って行くだけなので簡単と言えます。実際にやるとなると簡単ではありませんが、工程は非常に単純かつ奥が深いと言えます。そんな単純明快 に技術 を追求していけるような気にさせてくれるところが気に入ったのかもしれません。
さて、あなたも截金に興味を持つことができましたでしょうか?




































