2014年10月31日金曜日

截金を学ぶー阿弥陀三尊図 愛知県美術館蔵

 愛知県美術館には名古屋の美術収集家であった、木村定三氏とそのご遺族が寄贈した美術品が3000点以上あります。館内には木村定三コレクション室があり、定期的に展示替えを行いながらそのコレクションを公開しています。
 主に日本の江戸から近代の美術品が多かったと思います。もちろん日本人作家の洋画から中世以前の美術品まで多岐にわたります。
 そういえば大学院時代に、その掛け軸の状態を調査する業務の補助に携わる機会がありました。国宝などを扱う修復工房に所属する先生方の元で軸の状態を書類に記録していくというものでした。それは余談ですが、確か偶然展示で阿弥陀三尊図を観たことがきっかけとなり修了研究に選択しました。もちろん截金に取組む事を目的に作品選びをした結果ですが。美術館の学芸員の先生にはとてもお世話になりました。特に熟覧(実際に作品を観ること)では長時間に渡り行なう事ができたためより作品の雰囲気を掴む手助けとなりました。さらに、保存修復の先生に立ち会っていただいたこともあり見識も深める事ができました。何から何までご支援いただきとても幸せな時間であったと言えます。この場をお借りして改めて御礼申仕上げます。ありがとうございました。

 おっと、思いで話が長くなりました。かなり簡単ではありますが現状模写について自身の修了研究でご説明していきます。


 原本は鎌倉時代に制作されたもので、往生者を西方浄土から迎えに来る様を描いています。縦が100cm程度になり、標準的な大きさかと思います。愛知県に寄贈された際に半田九清堂で修理されており折れもなく表装が綺麗になっています。修復される前はかなりボロボロであったようです。
 来歴は不明ですが、巡り巡って木村氏が購入?したものと考えられます。時代を経ても尚放つ、時代を超えて来たからこそ放つ雰囲気には表現し難い感覚があります。経年変化した金色の肉身からは線香でいぶされて来たんだななどと感慨に浸りながら眺めてしまいます。截金もほとんど剥落がなく当時の技量の高さと如何に大切に使われて来たかが伝わって来ます。ただ、頭光のの剥落が激しいことが目に付きます。虚空や頭髪と合わせて剥落し易い素材であったことを伺わせます。(粒子が粗い、膠による接着が弱かったなどが考えられる)

 こうして過去から現在、そして未来へと語り継がれて行くんことの素晴らしいさ。いいですね。
完成図


【上げ写し】


薄美濃紙に墨線で図像を写し上げます。紙を上げ下げして残像を利用していきます。紙が上げ下げによる負荷や汗と湿気により徐々によれてくるのが難点です。


お顔から始めました。

作業風景。

作業風景。


【砧打ち】

木槌で絹を打ちます。優しく木槌の重みだけで均一に打って行きます。何時間打ちましたかな。6時間くらいでしょうか。

説明を追加



【絹の染色】

購入時の絹は無地のままなので、経年変化した雰囲気を出す為に染めます。背景など薄塗りの場所では大きな差が出ます。 

矢車(やしゃ)を煮て抽出します。
本来はヤシャブシ(夜叉五倍子)というのかな。カバノキ科。落葉小高木。福島県以南(太平洋側)から九州にかけて分布。

実は大学内にたくさん自生?しているため研究室の仲間達で採取しに行きます。青空の下気分転換にもなりました。






染め上げた絹を枠に張り込みます。


【彩色に持ちいる絵具】

絵具は混色して使用します。しかし、混色し過ぎは絵具が濁るため出来るだけしないで徐々に変化させていくことになります。 
消粉(けしふん/金の粉です)



【色見本の作成】

あらかじめ作成した色見本を熟覧時に持参して原本(実物のこと)と照合して色を調整します。その後実際にその色味を作るには何色を使ったらよいのか実験をしてから本番に入ります。






【彩色】

 上げ写しを絹の下において、線を写して行きます。その後、裏から彩色します。仏画の多くが両面から彩色が施されています。こうする事で表現に幅が出ますし、表に厚く彩色する手間も省けます。また、厚く彩色してしまうと軸に仕立てて巻いた時に割れや折れの原因になるようです。
 よく同技法同素材といわれますが、類似作品等も含めた当時(原本が制作された時代)の文献や科学的 資料が必ず必要になります。想像と独創的な発想で研究できれば良かったのですが何ぶん凡才でしたので本当に頭の痛い話でありました。結論を言えば、ある程度しか分からない場合が多いと言えます。



截金を の途中


【截金】

本研究のハイライトとなる截金。東京芸大の師匠から仏画を一幅仕上げたら免許皆伝だとおっしゃっていたので、気合いを入れて取組みました。とは言え、下手の横好き。時間もかかりましたし、線もガタガタで褒められたものではありませんでした。結局講評に間に合わないは、出来もイマイチだしで悔しいの一言でした。
 袖の麻葉文様 の幅は約3ミリ。金箔の太さは0.2〜0.3ミリ。裾などには唐草文がはいっていおおりましたが、0.2ミリ以下です。悶絶しそうな細かさでした。黒い線は、銀が焼けてしまったためです。
 目がよくて(これが一番大事かも)、長時間の同姿勢による作業にも崩れない正確な手さばき。さざめきにも微動だにしない精神力。ちょっとし事で発狂するようでは模写なんて・・・

阿弥陀如来

阿弥陀如来
勢至菩薩
勢至菩薩

光背

       
            
            

 

 実際に制作していて、これがまた失敗の連続でした。原本のように鋭い線描が出来ないし、色味もどのように調整していけばいいのか試行錯誤。肉身と着衣で色が違がったので、これは金??背景はなんでこんなに黒いの?と疑問ばかり。
 もちろん截金の正確無比な細かさに悶絶。そもそも技術がそれなりにないと模写の完成度を上げるのは難しいく。重ねて描いて行けば何とかなるという代物ではありませんでした。修練に修練を積んだ者のみが到達出来る境地ですね。
 誰でも大学で学べる機会があるわけではないため、趣味で嗜める場所があればと思います。愛知県芸のお膝元であるため日本画教室こそたくさんありますが、模写も出来る場所は少ないようですね。いや、仏画教室はあるのかな!?截金と合わせて何か起こしたい気もします。
 【表装】


 表具師の方の指導のもと仕立てていきます。一番苦手な工程でしたので、仕上がった時の感動は大きなものになりました。



 本紙の裏から補強用の和紙を打ちます。ヤシャブシで染色した薄美濃紙を使います。次に二回目の裏打ちを行ないます。これを増し裏うち(ましうらうち)と呼びます。最終的には裂と本紙をつなぎ合わせた後に三回目(または4回目)の総裏裏打で仕上げます。この時は宇陀紙を使いました。


使用する道具は実に単純

 大学、美術館、修復家、表具師、各 先生方の多大なるご理解とご支援を賜りましたおかげでなんとか終える事が模写研究でした。今一度感謝の意を述べたいと思います。


【主な参考文献】

 修了研究模写及び装こう「愛知県美術館蔵:阿弥陀三尊図」現状模写報告書 加藤正晴

 日本画用語辞典/東京美術
 


【裏話】
 仏画の資料は、公立の図書館よりも大学の図書館が充実している場合があります。特に仏画は大学の教授(美大ではない)が研究していることが多く機関誌に小論文を掲載している場合があります。こういった資料が母校にはほとんどなかった為、知り合いに頼んで金沢美術工芸大学の図書館で資料を取らせてもらった経験があります。ネット上で検索してなんとか取り寄せたり閲覧する機会を作る必要があるのです。いかに縦と横の繫がりを広げて行くかも「研究」には必要不可欠と言えます。行動力がものを言います。

 模写と截金どちらに興味が有ったのかと問われると截金に興味がありました。良くも悪くも彩色は個人差が出ます。技法も多岐に渡り頭を悩まします。その点截金は、形と幅を思い通りに切る事さえで切れば後は丁寧に貼って行くだけなので簡単と言えます。実際にやるとなると簡単ではありませんが、工程は非常に単純かつ奥が深いと言えます。そんな単純明快 に技術 を追求していけるような気にさせてくれるところが気に入ったのかもしれません。

 さて、あなたも截金に興味を持つことができましたでしょうか?








2014年10月29日水曜日

截金ー模写の見本

 掲載した写真は研修生時代に行なった截金の見本で、奈良博の十一面観音像の台座周辺の模写です。七宝に四菱が美しいですね。







2014年10月28日火曜日

JUNX Vol.6に参加しました。

関係者各位の皆様 へ

過日は一方ならぬご配慮をお受けし恐縮に存じ上げます。
この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

                              加藤正晴

 アメリカンな玩具やイラストにパンクなファッションに身を包んだ方々が集う催し物で、ハロウィーンに合わせた仮装をしている方もたくさんいました。会場はDJがダンスミュージックをガシガシ回して雰囲気を作って賑やかでした。

 会場内では「RedBull」の試飲が出来てそれ以外の飲食は禁止されていました。入り口で入場料を支払う際に再入場用に手の甲に判子を押されました。これで再入場が可能に。入場者の年齢層は20代半ばから30代くらいで、20代が多いかなという印象を受けました。出展者も若い人が多くて、フリーの作家さんか雑貨屋さんという組み合わせ。


 それで、問題の改造玩具展ですが写真のような状況でして。多くの作家が塗装はエアガンを使用して専用の塗料を塗布しているため表面の質感の光沢感と硬質感が強かったです。僕の作品と言えば何せ石塑粘土に古色付けした金箔、顔料なものですから地味。


これは筆者の。キャプションの記載が一部違う・・・金色ではなく古色です。


ライブペインとも開催されていた。








2014年10月27日月曜日

瀬戸市美術展での

 先日瀬戸美術展の搬出のため瀬戸市美術館へ。搬入から搬出まで運営は市職員によって運営されている本展。規模はけして大きくありありませんが(それでも賞金も出て、名古屋市内の区美術展よりは規模が大きいらしい)絵画から工芸まで幅が広く市内外から出品があります。公式サイトには過去の出品者の地域等の統計も出ています。搬入搬出は本人か代理人がする決まりだったので、直接搬入搬出をしてきました。


 
 



2014年10月23日木曜日

古典技法の応用

 今回初めて立体に金箔仕上げの作品を作りました。元の造形があったので、一から制作したわけではありません。それに手を加えて作品にしました。
 
 たまたま、大学時代に知り合いが経営している大須のお店に遊びに行って時に紹介してもらった催し物です。立体に日本画という組み合わせは今まで蓮弁以外で経験がなかったので良い経験となりました。

〜会期〜
JUNX Vol.6 CUSTUM SHOW
10月26日(日)/10時〜19時/吹上ホール第二ファッション展示場
公式サイト:http://junx-toyshow.com
yahoo!オークションで販売有り。

「古色金地仕上げ改造玩具 怪獣アイゾン改 (怪獣アイゾン)」

材料:石塑粘土、岩絵具、金箔、アクリル絵具

 色彩は仏像を意識して荘厳な印象を持たせつつもどこか怖く、可愛さの感じられる怪獣に仕上げました。怪獣というより妖怪っぽいかもしれません。
 
スケッチをしてどう改造するか検討します



 プラスチック系のプライマーかけて下地を作りました。

原型に尻尾が無かったので付け足しました。



背中を甲殻類っぽく

 胡粉ジェッソを施した後、丹を彩色しました。


  想像していたよりも金箔を押すのに苦戦しました。凹凸のある立体に慣れていないという事が大きな原因かと想像します。細かい隙間や凹凸に箔を押すためには時間がかかります。乾きにくい接着剤が必要となります 。膠では乾燥が速過ぎるように思います。箔も想像していたより使用してしまいました。

 仕上げに、汚しを入れ質感を描き込んでいきます。金箔も光沢を抑えて落ち着いた風合いにしていきます。













せこみち

 愛知県半田市で開催されていた亀崎せこみちを見学してきました。知り合いが何人か出品しているということで。ちょうどお祭りが開催されていて賑やかな雰囲気でした。
 使われていない民家や路地、神社の境内、公園に作品が点在しています。地図を片手に散策しながら見つけて行くという趣向です。サイクリングがてら半田まで脚を伸ばしました。


当日はたくさんの人が訪れていました。写真には映っていませんが。

こんな民家の中や周辺に作品が潜んでいる事も。

路地裏も要注意。







2014年10月21日火曜日

截金ー切り箔(裁文/さいもん)

 写真は切り箔です。正確に正方形や菱形、三角形に切りそろえて行きます。

 他にも彫刻刀や自家製の型抜きを用いて様々な形の切り箔を作る事ができます。










2014年10月20日月曜日

セラミックパークMINOと岐阜県陶磁器現代美術館

まさかこんな山奥にこんな綺麗な施設があるとは知らなかった。


 その存在自体は知っていたけれど、施設が県内有数の綺麗さだと言う事に驚きました。眺めの良いエントランス。19号からほど近い場所にありながら周辺は森、見渡す限り森。静かなところです。

 
 セラミックパーク展示ホールでは「第10回国際陶磁器展美濃」、美術館では「大織部展」が開催中でした。

大織部展:古田織部四百年忌と銘打って開催。古田織部の生涯をたどるとともに、同時代の焼き物も紹介する。

古田織部:1543年生まれ〜1615年没。諱を重然(しげなり)と言い、安土桃山時代の武将で、武将茶人として有名です。信長、秀吉、秀頼、家康、秀忠に使えなました。千利休の高弟(こうてい)として独自の茶道を創案し、後の茶道に新たな価値観をもたらした茶人です。利休の没後天下一の茶人と呼ばれていたそうです。

参考:展覧会リーフレット、古田織部美術館ホームページ。


駐車場


会場までは渡り廊下?で繋がっていてそこからの眺め

この奥がに施設がある
広場からの眺め
  


 広場の下が展示場になっていて、大ホールと美術館があります。

入り口周辺の広場
  会場の入り口には10回までの歩みが受賞作品とともに説明されたメモリアル展。どんな時代と共に本展が歩んで来た様子が分かります。


国際陶磁器展美濃:今年で十回目。「陶磁器デザイン部門」「陶磁器部門」の二種類があります。審査員は陶芸家やデザイナー、美術館館長 に美術評論家などで構成されていました。
広場からの眺め