通常、軸物は一回目の紙による補強を肌裏ち、二回目を増し裏ち、三回目を総裏ちと呼びます。一回目は炊きたての新糊で行い、二回目以降に使用される事がおおいようです。実際には、三回目の仕上げで用いられる事が多いかと思います。僕が実習で行った際はそうでした。徐々に弱い糊にして行く事で、仕上がりが柔らかくなるそうです。ただ、聞く所によると表具師さんの中には、古糊の存在を知らなかったり見たり触った事がない方もおられるようです。糊も、科学糊という人口の糊を使用されている場合もあり保存修復の現場以外では珍しい物となっているそうです。
母校でも、毎年大学院日本画領域第三研究室において大寒(2月)の頃に仕込んである古糊の蓋を剥がし糊の状態を確認しています。また、新しく壷一杯分の糊を炊いていました。壷一杯分の糊を炊くのは案外大変でした。しかし、現在母校では新しい糊の製造は行っていないそうで壷の中にある分だけのようです。水換えもしなくなてしまったのかな?在学中、実際に京都の国宝などの修理を行っている工房で何度か古糊を見る機会がありました。その時に少しだけお話も聞く事ができたことを懐かしく思います。この工房見学は現在も行われているそうです。
簡単ですが作業工程を紹介します。
まず一年に一回、糊が乾燥していないか確認するために和紙で封をしてある壷を開けます。左上の白い固まりは剥がした和紙です。開けた壷は、表面の灰汁を捨てて新しい水を入れます。バケツの水は、あらかじめ数日置いてカルキをとばしておきました。
水を換える事で乾燥を防ぎます。水を張る事で澱粉質の溶解もされているそうです。こうして接着力の弱い糊が作られます。
画面中央の黒い膜のは、しばらく放置しておくと糊の表面に出来るものです。黴というよりは灰汁と呼ばれているのかな?すみません、詳しくは分かりませんが乾燥を防ぐ効果があるとか。白い所は捨てる必要がなかったみたいですが。
水を換えているところです。ところで、この水換えも必ずしも毎年ではなくても大丈夫なのかな?工房によって扱いには差がありそうです。
蓋を開けると糊の表面が桃色になっていたり、黒い膜が張っています。それが通常の状態なんだそうです。この時は、上層部の灰汁をすべて捨てていました。当時から大学に詳しい方がいないと言うのが現状でした。
もう一度和紙で密閉します。乾燥を避けるため日の当たらない場所に保管します。修復工房では、蔵の床下に保存しているところもありました。
参考文献
日本画用語辞典/東京美術/東京芸術大学大学院文化財保存日本画研究室
日本美術の保存修復と装潢技術その弐/グルプロ/国宝修理装潢師連盟




